- 田島圭
- - 前景、側景、後景。 -
- 2018.2.13 - 2018.2.25
- Close : 2.19(mon)
- Open : 11:00 - 18:00
あこがれ
描くことへのあこがれ。これは田島の絵画に対する原体験である。学生時代、「絵画的空間とは何か」と憧れの作家に尋ねた際、「フランク・ステラはあの線を塗るのではなく描いているのだ」と答えたことに田島は衝撃を受けたという。そこからクリエイティブな瞬間を求め、描くことに没頭する。しかし、それが叶わない夢だと感じると一転、閃きに輝きを見出そうとする。
初めて田島の《スタッキングペインティング》を目にしたとき、重ねられたキャンバスの間から何かがうごめいているような印象を受けた。そこから這い出たくてうずうずするような。一方で、作品の周りは非常に静かで、緊張感のある空間から生命の光と時間を感じることができた。
田島の作品は一見すると一面真っ黒であったり、いくつもの線が引かれているだけのように思える。しかし、よく見てみると小さな升目や境界線を見て取ることができる。田島は自分で描くことができない線を偶然や必然の助けを借りて描こうとする。キャンバスに無数の升目を書き、計算機を使ってその升目を機械的に埋めていくような「めんどくさい」作業を重ね、最後に出来上がった面に一瞬の輝きを見出す。描きたいが描けない。その葛藤が作品の内側から溢れるような光と時間を感じさせる。静かに、そして着実に。
今回出品する新作《フロントビュー》《サイドビュー》《リアビュー》は、これまでの表現を応用し、田島が考える新たな平面に挑戦した作品である。角度によって様々な色の線が見えたり、白い画面に幻影のように見える光。いずれもこれまでと同様、気が遠くなるほどの回り道をして描かれた立体であり平面作品に仕上がっている。描くことを様々な視点から具象化したこの空間は、見るものに「平面とは何か」という問いを投げかけてくる。
「めんどくさい」作業とそれを微塵も感じさせない圧倒的な平面力に裏付けられた今回の展示は、描くためのあこがれを秘めた田島の覚めない夢なのである。
愛知県立芸術大学芸術資料館
川上真由子