●過去の企画展    
田島圭
- 前景、側景、後景。 -
2018.2.13 - 2018.2.25

あこがれ
 描くことへのあこがれ。これは田島の絵画に対する原体験である。学生時代、「絵画的空間とは何か」と憧れの作家に尋ねた際、「フランク・ステラはあの線を塗るのではなく描いているのだ」と答えたことに田島は衝撃を受けたという。そこからクリエイティブな瞬間を求め、描くことに没頭する。しかし、それが叶わない夢だと感じると一転、閃きに輝きを見出そうとする。 初めて田島の《スタッキングペインティング》を目にしたとき、重ねられたキャンバスの間から何かがうごめいているような印象を受けた。そこから這い出たくてうずうずするような。一方で、作品の周りは非常に静かで、緊張感のある空間から生命の光と時間を感じることができた。
 田島の作品は一見すると一面真っ黒であったり、いくつもの線が引かれているだけのように思える。しかし、よく見てみると小さな升目や境界線を見て取ることができる。田島は自分で描くことができない線を偶然や必然の助けを借りて描こうとする。キャンバスに無数の升目を書き、計算機を使ってその升目を機械的に埋めていくような「めんどくさい」作業を重ね、最後に出来上がった面に一瞬の輝きを見出す。描きたいが描けない。その葛藤が作品の内側から溢れるような光と時間を感じさせる。静かに、そして着実に。
 今回出品する新作《フロントビュー》《サイドビュー》《リアビュー》は、これまでの表現を応用し、田島が考える新たな平面に挑戦した作品である。角度によって様々な色の線が見えたり、白い画面に幻影のように見える光。いずれもこれまでと同様、気が遠くなるほどの回り道をして描かれた立体であり平面作品に仕上がっている。描くことを様々な視点から具象化したこの空間は、見るものに「平面とは何か」という問いを投げかけてくる。
 「めんどくさい」作業とそれを微塵も感じさせない圧倒的な平面力に裏付けられた今回の展示は、描くためのあこがれを秘めた田島の覚めない夢なのである。

愛知県立芸術大学芸術資料館
川上真由子

作家経歴
田島圭

  • 1978年生まれ


  • 2005
  • 名古屋造形芸術大学大学院 造形芸術研究科修了 岐阜県在住
  • 2009
  • 野外研究/みのかも文化の森
  •     
  • 野内研究/美濃加茂市民ミュージアム
  • 2010
  • 殿様のわらじ/星画廊
  •     
  • 一巻図書IKKAN週替わり展示/伏見地下街
  •     
  • 文化の森ギャラリー2010/みのかも文化の森
  • 2011
  • 文化の森ギャラリー2011/みのかも文化の森
  •     
  • 上の空/アートラボあいち
  •     
  • 密度Ⅱ/アートラボあいち
  • 2012
  • 文化の森ギャラリー2012/みのかも文化の森
  •     
  • 500人展/市民ギャラリー矢田
  • 2013
  • 文化の森ギャラリー2013/みのかも文化の森
  •     
  • 造形プロセッシング/アートラボあいち
  • 2014
  • 美濃加茂Annual 2014/みのかも文化の森
  •     
  • 亀崎せこみち展/半田市亀崎町一帯
  • 2015
  • 美濃加茂Annual 2015 /みのかも文化の森
  •     
  • 亀崎せこみち展/半田市亀崎町一帯
  •     
  • GALLERY MIKAWAYA Pre-open exhibition/GALLERY MIKAWAYA
  • 2016
  • 田島圭 個展/Gallery noivoi
  •     
  • 田島圭 個展/GALLERY MIKAWAYA
  •     
  • 美濃加茂Annual 2016 /みのかも文化の森
  •     
  • PLAY vo.1/高浜市やきものの里 かわら美術館
  •     
  • 亀崎せこみち展/半田市亀崎町一帯
  •     
  • 善好/アートラボあいち大津橋、アートラボあいち長者町
  • 2017
  • SKY OVER Ⅳ/アートラボあいち大津橋
  •     
  • Minimalism/Gallery noivoi
  •     
  • 美濃加茂 Annual 2017/みのかも文化の森
  •     
  • なごや寺町アートプロジェクト/名古屋市・東別院~西別院一帯、崇覚寺 

    展示作品